明け方3時は、まだ暗い。

美大受験生のひとりごと。

始まりが付けた傷跡

 

どうも、真白です。 

 

ブログ開設してから初めての記事に何を書いたらいいか迷って、それじゃあ アーティストに憧れたきっかけでも振り返っておこうかと、指を動かしています。

 

長い年月の話なので、まあそこら辺はおいおい。とりあえず明確なきっかけなった出来事についてでも書くことにします。

 

それでは、どうぞ。

 

 

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幼い頃の私は、見るもの全てに興味を持ってはすぐ飽きる。

音楽とゲームが苦手で、絵を描く事とミステリーが好きな、普通の子供だった。

 

学歴主義者で厳しい変わり者の母親と、勉強熱心な普通の父親の元に生まれ 、なんだかわからないまま遊具に釣られていった学校に、気づいたら入学していて。(これがお受験だったと言う事には向こう5年は気づかなかった)

 

二階建てで、ワンフロア ワンルームの合計2部屋しかない素朴なアパートに住んでいたはずが、気付くとちょっと大きめのアパートに住む事になっており、何故うちはこんなに節約しているのだろうかと疑問に持ち始めているうちに、どういう訳か、マイホームで暮らしていた。

 

 

2005年12月30日

 

幼稚園卒園を控えた年末。引っ越してきた新居で私はテレビを見ていた。

 

付けていた番組は、レーコード大賞。

大型音楽番組好きで、FNSやMステなど、事あるごとにチェックしていた母親は楽しみにしていたけれど、当時演歌ばかりの番組を幼女が楽しめるはずもなく、故に楽しみにしていた訳もなく。

それでも何故、見ていたかといえば、単純に引っ越したてで物がなく、やることがなかったからだった。

幼女の起きている時間の番組なんて、大体ニュースしかやっていないし、ゲーム(当時はDS)にも さほど興味は無い。

だから、だらだらとチャンネルをくるくる変えながら、年越しそばが出来るまでの暇つぶしに「こういう歌の良さも分かるようになりたいなー」なんて事を呑気に考えながら聞きたくもない演歌を無理やり聞いていたのだった。

 

 

そんな中で、一組のグループの順番が回ってきた。

パフォーマンス前の簡単な挨拶で、どうやら彼らが最優秀新人賞にノミネートされている事、男女混合なのが特徴である事を知り、そのビジュアルに一瞬にして目を奪われた。

 

「お母さん見て!ギャルだ!!」

「やめなさいよ!?」

食い気味だった。

まだ「なる」なんて一言も言っていないんだが。

 

 

「ギャルってこういう人達の事を言うのか…」

というのが第一印象だった。

如何せん お堅い両親の元で育っていたので、当たり前に身近にはいないし、子供向け番組で見る機会もない。なので その時初めて見た派手な若者は、とても新鮮で興味を惹かれたのを覚えている。

「この人達は かっこいいと思ってるから、この格好をしているんだよね。」

これは決して侮辱している訳では無い。

母親に連れられて高い服を当時からよく着せて貰っていたけれど私は、本当は、今で言う量産型のような格好がしたかった。

フリフリとかレースとかを、可愛いな、着てみたいなとずっと思っていたけれど、お堅い母親はギャル……というか、要するに「品のない人」を毛嫌いしていたので、ギャル全盛期の中、どうしたって雑誌で見たような服を着ることは叶わず。

そうやって周りの目線を気にせず好きな格好をしている人に羨望の眼差しを向けるしかない。

私だって品のない人は好きじゃないけど、好きな服は着たかった。

 

 

司会者からの質問に答えていく若者の姿を見ながらルーズソックスを履いて制服を着崩した自分の姿が想像しされる。

「私も高校生くらいになったらこうなるのかな…」

「やめなさいよ?!」

またしても食い気味だった。

思わず思ったまま母親に報告して、間髪入れずにと力強く言われ、やっぱりしばらく好きな格好はできそうもないな、と肩を落とした

がっかりして、そのままーーー興味を失った。

 

 

司会者が曲振りをしてパフォーマンスが始まる。

母親の反応が私の興味を著しく削ぐものであった事は事実だけれど、それは決して直接的な原因ではない。

単純に、始まったパフォーマンスに毛ほども魅力を感じなかったのだ。

曲調も好きな感じではなかったし、ダンスの動きも早く、多いので、顔を捉えようとするカメラワークだと、認識する前にフレームアウトするから、どこを見たらいいのか わからない。

黒ベースに白いラインが入り、キラキラとラインストーンのついた衣装も好みとは言い難く、その年のレコ大のステージデザインも同じく黒ベースに白いラインだったので、強い照明の反射と画質の悪さも相まって、明度差で視界がバチバチして、とても子供が見続けるのには厳しものだった。

 

アイドルではない立ち位置に、どんなパフォーマンスが見れるのか楽しみにしていたということもあり、歌って踊ってアイドルよりちょっと激しくアクロバットするだけのパフォーマンスは期待外れ。

「なんだぁ、結局ダンス&ボーカルグループはステージ上で、歌って踊る以外にアクロバットくらいしかやることがないのか。」とか、

「どうせ なんとなくやりたいって感情でオーディション受けて、いい感じに上手かったからオーディション通って、そのまんま流れでデビューって感じだろ。5年で終わるな。」

とか思っていたのだから、とんだマセガキである。

 

グループにも、パフォーマンスにも魅力を感じられず、  なんとか かっこいい人はいないか探してみたけれど、そもそもまともに顔を抜かれているのが4人だけでありながら、全員さまざまな理由で顔が判別できない。

歌っている人、一人はラップが異色すぎて幼女には怖いし、一人は帽子をかぶっていて顔がよくわからない。女の子は目の周りが真っ黒で顔が判別できず、踊っている人たちの中には、友達にはいないタイプの強そうな女の子、友達のお兄ちゃんと同じくらいに見えるガリガリの男の子、黒い肌に黒髪で顔がわからない人に、可愛いけど絶対メイクしてない方が良さそうな子が並んでいる。

 

そんな中で、唯一顔が認識できた男の人。

優しげな顔立ちに、品のある出立ち。

 

そして、何かに基づいて確信を持ったパフォーマンス。

 

ーーーそれを見た瞬間、

「これだ…!これやりたい!!」

「歌も踊りも全く興味ないけど、これやりたい…!」

 

今考えると、これが私の“表現”へ のめり込む第一歩だったのかもしれない。

 

 

その後、そのグループは無事、最優秀新人賞を受賞した。

「最優秀新人賞は…AAA!!!」

堀江貴文さんに名前を呼ばれて涙して喜ぶ姿は、彼らにとってその賞がどれだけ価値のあるものなのかを物語っていた。

他人の本気度合いなんてわからないし、パフォーマンスに対する私の感想が変わるわけではないけれど、他人の夢が叶う瞬間、目的を果たし現実感がなく戸惑いながら喜ぶ様子を見て

 

「ただ、チャラチャラしているだけじゃない。

この人達は、好きな服を着て、好きな髪型をして、やりたいこと"やりたい"と言って、それをやる為に努力して。あの舞台に立っているのはその結果だ、、

好きな格好して、好きな事をして、社会的にも自分的にも価値のある結果を残している……」

 
そのの事実に酷く感動して。
 

「……羨ましい。」と思った。

 

私も、 自分のスタイルを明確に持ち、それを恥じる事なく他者と共有したい。

 

私も、やりたい事を満足いくまでやりたい。自分の可能性を何一つ潰したくない。

 

地位も金も異性を籠絡したいとも思わないけれど、私も

ーーー全力で考え抜いて、こだわり抜いた何かで誰かとやり取りをしてみたい。

 

その思いは15年の月日を渡り、やがて大きな傷跡となることを、当時の私は少し予感していた。

 

 

mashiro.